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OHSSとは

OHSS(Ovarian Hyperstimulation Syndrome:卵巣過剰刺激症候群)とは

OHSS(Ovarian Hyperstimulation Syndrome:卵巣過剰刺激症候群)は、不妊治療の一環で行われる排卵誘発剤の使用によって卵巣が過剰に刺激され、卵巣が多嚢胞性に腫れ、さまざまな症状が現れる状態です。

体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)などの生殖補助医療(ART)においては、1回の採卵でできるだけ多くの成熟卵子を得るために排卵誘発剤を使用します。薬剤の反応は人により異なりますので、患者様によっては排卵誘発剤を使用した際に発生する可能性があります。

1. OHSSの原因

OHSSは、排卵誘発剤(例: hMG、FSH、hCGなど)を使用して卵巣を刺激し、多数の卵胞を成長させる過程で起こります。特に、以下のような状況でリスクが高まります:

hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の使用: hCGは排卵を促すために使用されますが、卵巣を過剰に刺激することがあります。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS): PCOSの患者はOHSSを発症しやすい傾向があります。

若年女性: 卵巣の反応が良い若年女性もリスクが高いです。

多数の卵胞が発育した場合: 多くの卵胞が発育すると、卵巣が過剰に刺激されます。

2. OHSSの症状

OHSSの症状は、軽度から重度までさまざまです。主な症状は以下の通りです:

軽度のOHSS
– 自覚症状が軽く、日常生活に支障がない。
– 下腹部の張りや軽い痛みを感じることがある。
– 卵巣に軽度の腫れが起こる。
– 吐き気や腹部の不快感が生じることがある。

中等度のOHSS
– 腹部の膨満感や痛みが強く、吐き気や嘔吐を伴うことがある。
– 体液貯留による体重の増加が起こる。
– 超音波検査で腹水が確認されることがある。
– 尿量の減少が起こる。

重度のOHSS
– 強い腹部の痛みや膨満感が起きる。
– 胸水や腹水による呼吸困難や腎機能の低下による尿量の減少など、全身に症状が現れる。
– 血液検査で血液濃縮や電解質異常が確認され血栓症のリスクが上がる。
– 卵巣の著しい腫大や破裂のリスクが上がる。

3. OHSSの予防と経過

OHSSを予防するためには、以下のような対策が取られます:

予防策
– 個別化した排卵誘発法:患者の年齢や卵巣の反応性に応じて、排卵誘発剤の量を調整します。
– GnRHアンタゴニストの使用:OHSSのリスクを軽減するために、GnRHアンタゴニストを使用することがあります。
– hCGの代わりにGnRHアゴニストを使用:hCGを使用せずにGnRHアゴニストで排卵を誘発することで、OHSSのリスクを減らすことができます。
– 凍結胚移植:OHSSのリスクが高い場合、採卵後に胚を凍結し、体調が回復してから移植を行うことがあります。

治療法

軽度のOHSS:
– 自宅での安静と水分補給が中心。
– 定期的な経過観察が必要。
→通常1~2週間で自然に改善します。

中等度以上のOHSS:
– 入院が必要な場合があります。
– 点滴による水分補給や電解質の調整。
– 腹水や胸水がひどい場合は、穿刺して排出することもあります。
– 血栓症予防のため、抗凝固剤を使用することもあります。
→適切な治療が必要で、回復までに数週間かかる場合があります。

妊娠が成立すると、hCGが持続的に分泌されるため、OHSSの症状が長引くことがあります。

6. 重症化を防ぐために

– OHSSのリスクがある場合、医師から十分な説明を受け、理解しておくことが重要です。
– 腹部の張りや痛み、吐き気などの症状が現れたら、早めにクリニックに連絡しましょう。
– 治療中は、水分を十分に摂取し、安静を心がけることが大切です。

まとめ

OHSSは、不妊治療中に起こり得る合併症の一つですが、適切な予防策と早期対応により、重症化を防ぐことが可能です。気になる症状がある場合は、すぐに医師に相談してください。

当院では、治療中には超音波検査により患者様の卵巣の状態を細かくチェックし、場合によっては治療を中断することで重症化を防ぐ取り組みを行っております。

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